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沼池(ぬまち)

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lucia(試訳)

ルーシア

あの夏は本当に恐ろしかった。
今でも恐ろしいんだもの。
ルイスに愛されて私は幸せだった。
すばらしいことだったわ。
でも、そのためにぶるぶるふるえなければならないときもあった。
ルイスがなにもかもをなかったことにしちゃったからよ。
まるで彼が、全然なんにも口にしてこなかったみたいだった。
少なくとも私はそう感じたわ。
すべてを放っぽって彼が行ってしまったときは、
少しだけ悲しかった。
あの頃の私は、眠りにつくまでの間に、
ずっとぐるぐると考えごとをつづけていて、
きっと何か恐ろしいことが起こっているんだって妄想してたから。
いまだに、ぐっすり眠るなんかできないわ。
物音を聞くと、誰かが窓をこじ開けようとしているような気がするの。
古い家がよく軋むことは知ってるわ。
でも時々、本当に大きな音がするの。
それで私は恐怖でいっぱいになる。
最悪なのは、確かめにいく勇気がないこと。
ただベッドに横になっているだけ。
まぶたを閉じて。
目を開くと、
天井をただじっと見つめる。
眠ることなんかできない。
音が一晩中続くときもあるの。
黒い髪で大きな手をした誰かが、
下の部屋の窓を通り抜けようとしている気がする。
たまに、それが夢でありますようにってお祈りするの。
私はやつらに、別の家へ行って下さいってお願いするのよ。
隣の家へ行ってくれるようにって。
そしたら、そんなお願いをしてしまったことが恥ずかしくなるの。
泉へ行くと、
ルーシア、
ルーシア、
ルーシア。
と呼ぶ声が聞こえた。
自分の名前が聞こえたから、私は辺りを見回した。
誰もいなかった。恐ろしくなって、そこから逃げた。
いくら走っても帰り着けないの。
人ひとり見当たらない。
と思ったらね、彼らを見つけたの。
私ね、隣の夫婦が嫌いなの。
ご主人はすごい変な人だし、
庭では何日も、夜中変な音がしてたから。
私ぞっとした。
でも彼らに、見たままのことを話をしたわ。
そいつは草むらの中にいたんです。
草むらの中で動いていたんです。
黒い獣みたいで、
狼のようだったんですって。
でもへんなのよ。
そいつ人間みたいにも見えたんだもの。
でも奥さんは、心配することはないって言ったわ。
それは私の妄想にすぎなくて、
こわがることはないんだって。
時々ね、あれは私をからかおうとしたルイスだったんじゃないかって思うの。
狼男のふりをしていたんだって。
でもね、また時には、何かのふりをしていた訳ではなかったのかもしれないとも思うの。
それは、庭にある重い石像の足音みたいで、
乾いた枝が鳴るような、
口の代わりに穴から息を吐き出したような音だったわ。
私ね、隣の夫婦が嫌いなの。
ご主人はすごい変な人だし、
庭の手入れをしないのよ。
彼の飼っていた犬が死んだときだって、
本当は事故や病気なんかじゃない。
彼らが何か硬いもので頭を打って殺したんだ。
だから隣の人が話をしにうちに来たとき、
どうしてドアを開けたのか、
私自分でもよくわからない。
私は、捨てる勇気なんかない。
私には何も捨てられる物なんかないもの。
だからね、色んなものがいつもちょっと散らかっちゃうの。
変なのよ、人ひとり見当たらない。
でもそう思ったら、彼らを見つけたの。
私は彼らに、何も話さなかった。
あいつらが言うに決まってること、知ってたもの。
あいつらはこう言うわ。
うそつき、うそつき。
うそつきのルーシア。
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